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   No.11 2008/06/26 名画中の名画・・・美と愛を司るモノ・・・


ヴィーナスの侍女である三美神が舞い踊り

守護者メルクリウスが暗雲を追い払い

西風の神ゼフュロスにつかまる事により花の神フローラへと変身した大地の精クロリスの口から
は春の花々が溢れ出す。

彼らに囲まれ、穏やかな表情を浮かべている女性こそが愛の女神ヴィーナスである。



メルクリウスが追い払う暗雲は「無知」の象徴。

「美と貞操」を表す三美神の存在。

「愛は盲目」と言うことわざを表すキューピッド。

ゼフュロスとクロリスの存在が「春風が吹いて大地に花が咲き乱れる」と言う神話を象徴し、絵
の中の世界に春が訪れた事を表す。

足元に咲き乱れる花々は非常に緻密な描写で品種を特定するに容易であり、それら一つ一つの花
言葉に「愛」が含まれているのを知る事ができる。

「プリマヴェーラ」またの名を「春」と呼ばれるこの優雅で華麗な作品を前にすると、前述した
ような予備知識が無くともそのテーマが「愛の美しさ」である事が、言葉ではなく感覚で自然と
観る者の心に流れ込んでくる。

その絵の隣にはヴィーナスが大きな貝殻に乗り、ゼフュロスとクロリスが創り出す風により、今
にも岸辺(キプロス島)にたどり着かんとする瞬間を描いた「ヴィーナスの誕生」が掛けられて
いる。



ゼフュロス達の生み出す風に舞い散るピンクの薔薇もヴィーナス自身と同様「愛」の象徴である。

岸辺でヴィーナスを迎える女性は時間の神ホーラで、その存在は再生と復活の季節「春」を表す。

また、彼女が襟元に巻いている常緑樹は「永遠の愛」を象徴している。

この作品にも他に様々な意味が込められているのであろうが、プリマヴェーラと同じ様にそれら
を知らなくても「愛」や「美」そのものを純粋に感じることができる。

ルネサンス絵画の代表格とされる、巨匠ボッティチェリが描いたこれら二つの作品は当時の美術
のスタイルに革命を起こし、現在もなお、見るものにその魅力を発信し続け、多くの雑誌や書物、
学校で使用される教科書などで目にする事ができる。

しかし今回、印刷物で何度見ても感じ取れないモノが、実物の作品を間近に観ることにより初め
て感じられるのであると言う事をあらためて気付かされました。

この頃は、インターネットやテレビ、雑誌などによる情報過多状態により、ヴァーチャルな世界
と現実との境界がぼやけてしまっていて「観た(体験した)気にさせられる」事が多い様に思い
ます。

絵具で絵を描く(または観る)と言う行為は極めてアナログな作業で、時代に逆行している様に
思いがちですが「実物」を目の当たりにし、「感じる」事の大切さを常に認識する為に絵画と言
うものが必要とされるのだと思います。

皆様もフィレンツェ・ウフィッツィ美術館を訪れた際は是非ボッティチェリルームへ足をお運び
下さい。

この先あらゆるモノがどんなにデジタル化されても、きっと絵画はなくならないのだと信じられ
ますよ。

2007年8月8日

フィレンツェ・ウフィッツィ美術館見学




 
 
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